以前作成した特性要因図を更新しました。
作成した特性要因図のみ公開していましたが、要因として6項目ありますので、各要因毎にその解決方法をご紹介していきたいと思います。意外に簡単なことでも対応されていないことがあるかもしれません。
では、今回は
要因① 使用方法
全部で、10項目上げました。
再生可能エネルギーを活用している場合でも、100%自家利用とはなかなかいかないと思います。使い方を工夫して、少しでも削減できると良いですね。
この「使用方法」が最も、利用者自身で対応しやすい内容が多いと思います。
では、順にみていきます。
順不同で、特性要因図に書いてある順とします。
1.こまめにオン・オフorつけたまま
これは、冷暖房期になると、毎年のように話題になってくることですね。
ひと昔前なら、もうこれ一択だったと思います。「こまめにオン・オフ」
例えば、会議室やリビングですが、使う時にエアコンをオンにして、退室するときにはオフにするというように、かなり頻繁にオンオフをするというものです。(ご家庭では、そこまで頻繁ではないかとは思いますが)
実はケースバイケースなのですが、
そのケースによるのですが、判断するポイントが2つあります。
1⃣ エアコンがインバーター制御か一定速、いずれの機器?
近年では、インバーター制御が当り前になってきましたので、室温が設定温度になると停止するのでなく、緩い負荷を軽くした運転に切り替わります。室温が設定温度と変わってくると負荷を高くするというものです。
以前は、完全に室温が設定温度になると停止し、室温が設定温度と変わってくるとまた運転再開となっていました。
運転したまま(つけたまま)でも、自動的にオン・オフになるのですが、この再始動のオンの時に電流が多く必要(電気使用量が増える)となっていました。また、オフになるまで高い負荷のまま運転されるというイメージです。
家庭用のルームエアコンは、もうかなり前からインバーター制御されているのまず殆どがインバーター制御されていると思われます。一方、業務用のエアコンの場合、設備更新が進んでいない場合、まだインバーター制御されていないものも動いている可能性があります。
一定速機の場合、今なら機器更新という対策案も上がってきますが、簡単に更新できない場合などでは、インバーター制御を追加するという方法あり、これでかなりの省エネになります。
2⃣ 建物が断熱化されているか、隙間風が入ってくる空間か
昔の木造校舎を思い出してください。(思い出せない人も多いと思いますが)
三匹の子豚でも良いですが、分かりますよね。
隙間風が入ってくる空間で、エアコンを使うとどうなるか?
熱って、移動してしまうんです。熱い空気は、冷たい空気の方に移動してしまいます。
それが、近年の建物は、高断熱・高気密化が進んできました。
今新築されるものは、省エネ化が進んでいます。
断熱・気密が進むと、熱の移動が無くなります。
壁から、また隙間がないため、移動がゼロではないですが、少なく済みます。
この場合は、熱のロスが少なくなります。
このように、高断熱・高気密の空間の場合は、エアコンは早く室温が設定温度に達しやすく、緩く負荷が軽い運転となります。
このような場所で使用している場合は、却って頻繁にオンオフしてしまうと、オンの時の始動電流がかかり、電気使用量が増加してしまうかもしれません。
(結論:解決方法)
上記、1⃣2⃣の要件がありますが、30分程度の短時間であればつけっぱなしの方が電気使用量が少ないという場合が多いと思います。
ただ、窓等の開口部が多い空間は、どうしても熱が移動しやすいため、正確には計測して比較してみないと分からないというところが本当だと思います。(思いますばかりでスミマセン)
会社等の場合、省エネ・節電意識を持ってもらうため、敢えてこまめにオン・オフを推進するというのはアリだと思います。
難しいのは、推進するのは良いのですが、効果はどうなのか分からず、多少我慢させることを強いるだけだと、意欲も低下してしまいますので、そこは注意が必要ですね。
また、お昼休みなどある程度の時間停止させ、午後の業務開始と伴に一斉に再始動となると、デマンド値(30分デマンド値)が大きくなってしまう可能性もありここは要注意です。
2.換気の実施で熱移動が発生(設定温度にならない)
換気は、コロナ禍でその実施が推奨されており、実感されていることと思います。
上記の気密・隙間風とも関連してきます。
敢えて、通風させるため窓を開けるといった自然換気をやっていますので、室温と外気温の差が大きい場合(エアコンを運転する時期)は、熱移動が起きます。換気システムを使用している場合は、かなり抑制されますが、でも熱は逃げるのは避けられません。
冷房であれば冷気が外に行き熱い空気が入ってくる。
暖房であれば暖気が外に行き冷たい空気が入ってくる。
すると、設定した温度に室温がなかなか到達せず、エアコンは運転を高い負荷のまま継続されるということになります。
電気使用量が多くなります。
自然換気の場合、湿気や埃・菌なども移動してしまいます。屋外に排出できれば良いですが、屋内に取り込んでしまうということもあります。(窓開け換気を始めたら、エアコン室内機のカビが目立つようになったという事例も)
でも、感染症対策として換気は重要です。
なお、換気扇の利用や、排気装置の利用も影響があります。
(結論:解決方法)
適正な通風で換気を実施し、必要以上の換気をしない。
通風を自然換気でなく換気システムを導入するという手もあります。
通風は風の流れを作る必要がありますので、どこをどれくらい開けるのかを知る必要があります。
また、どれくらいの時間開ければ換気されたか。
その目安になるので、二酸化炭素(CO2)濃度の測定があります。
換気についてはコチラを参照下さい。https://i-mage.co.jp/kanki/
そこまでしなくても
常時換気をするのでなく、30分間に1回、数分程度窓を全開にするという厚生労働省推奨の換気方法があります。
空気の入れ替え以外に熱の入れ替えを意識して行う場合もあります。
外出から戻った際にいきなりエアコンを入れるのではなく、まず室内にたまった熱を屋外に出して少しでも室内温度を下げてやることで、始動時の負荷を少しでも軽くしてやることができます。
夏場、直射日光当たる箇所を開けると、熱を室内に入れてしまい、閉めることで熱を封じ込めてしまうことになりますので、どこを開けるのかというのは大事になります。
家庭用エアコンで、換気機能付きのエアコンがありますが、基本的に換気扇と同じく排気のみを行うため、吸気しないと空気の入れ替えはできません。
3.空気が循環していない
気密性の高い室内の場合、温かい空気は室内の上に、冷たい空気は室内の下に溜まりやすくなっています。
暖かいと膨張して上のほうへと上り、冷たいと下に溜まるという性質です。
どうしても目には見えませんが、室内で温度差が出てしまいます。
お風呂をイメージすると分かりやすいと思いますが、水が溜まっている状態から沸かすと、まず上の方が熱くなりますが、下の方は冷たい状態になります。まさにこの状態が水と空気の違いはありますが、室内に起きます。
暖房運転の場合、顔は暑くなっても、足元の方が寒いままという場合があります。
エアコンの風向きの関係もあります。
窓等の関係で、室内機を設置する場所に制約があり、その対面には風が届きやすいのですが、左右にはどうしても風が行きにくくなります。そのため、室内でも均一の室温になり難い場合があります。そのため設定温度を高くし過ぎてしまうなどで対応しがちです。
冷房運転の場合、通常室内機は壁掛け・天井埋め込み・据え置きともに、ある程度高い位置に設置されているため、そこで吸い込んだ空気の温度で感知して、設定温度に達したかをチェックしています。一般住宅の場合、天井近くまで冷えないといけないことになってしまいます。勿論、風向きによりますが。
(結論:解決方法)
室内機から吹き出された空気を攪拌してやると効果があります。
シーリングファンやサーキュレーターを使うという方法です。
窓を開けて換気する方法もありますが、電気料金という面では、上記2の通り弊害があります。
シーリングファンは据付するものですが、サーキュレーターは必要に応じ設置場所を変えてやることが可能です。
暖房であれば、室内機に向けて、吹き出し口に向かって風を送る
冷房であれば、室内機を背にして、吹き出された風を回してやる
室内の構造等によって、工夫して空気が循環し、熱だまりができなうようにしてやるのが良いと思います。
熱だまりができると、結露発生の原因ともなってしまいます。
4.湿度の管理がされていない
エアコンを使う場合、温度設定はありますが、残念ながら湿度設定というものがありません。
ただ、快適さを感じるのは、勿論個人差はありますが、湿度は重要な要素となります。
夏場によく出てくる暑さ指数(WBGT)は、 ①湿度、 ②日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、 ③気温の3つを取り入れた指標となっています。
また、快適性評価(PMV)は、人がどれくらい快適かを表す指標で、温度、湿度、放射温度、気流速、着衣量、活動量の6つの要素から算出されます。クールビズなどでもこの要素を重視しています。
いずれも、湿度が入っており、人間の暑さ寒さは、湿度が重要だということが分かります。
(結論:解決方法)
湿度も注視して行くことが重要です。
基本的には、同じ温度とした場合、夏は湿度を低く、冬は湿度を高くすることで快適性を感じやすくなります。
ということは、夏は除湿、冬は加湿ですが、適正というものがあります。
労働安全衛生法でも、“事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が17度以上28度以下及び相対湿度が40%以上70%以下になるように努めなければならない。”とされています。
相対湿度とは、一般的に湿度と言っているもので、温度によって同じパーセントでも水分量は変わってきます。
夏場は、室温25~28℃で湿度50~60%が理想的とされ、
冬場は、室温18~25℃で湿度40~50%が最適とされます。
湿度が低すぎると乾燥し過ぎ、逆に湿度が高すぎるとカビが発生するなどの問題が出てしまいます。
因みに、加湿器はカビが発生しやすい環境が揃った機器と言えますので、定期的に洗浄をすることをおススメします。
エアコンを使う場合、温度設定はありますが、残念ながら湿度設定というものがありません。
基本的に、エアコン運転は湿度(相対湿度)を下げます。
5.機器毎に使用状況が把握されていない
エアコンは、機器毎に能力や消費電力などが変わってきます。
また、当然ですが、室内環境なども設置場所によって変わってきます。
使用期間や使用時間もそれぞれで変わり、設定温度も変わる可能性があります。
例えば、クールビズだからと、28℃という数値に注目してしまうと一律の設定になってしまいます。
でも、当然変わってきて良い筈です。
冷房時の外気温や湿度、「西日が入る」などの立地やな建物の状況、また、どのような活動を行う空間か、どのような服装で過ごす空間か、体感温度は人によっても異なることから、室内にいる方の体調等を考慮する必要があります。
着衣の関係で19℃設定のところもあったりしますが、それは快適性・健康を考えた場合、やむを得ないと思います。
ただ、なかなか冷えないから、温まらないからというケースも見受けられました。
(結論:解決方法)
まずは、機器の一覧表を作成、メーカー・機種名・定格消費電力、使用期間、使用時間、設定温度を明確にする。
ここから、機器毎の年間電気料金目安が把握することが可能です。
見える化されることで、適正な使用なのかどうかが分かるかもしれません。
2:8の法則の通り、年間電気料金が多いものから使用方法の検討や対策を検討していく材料となると思います。
ご家庭だと、リビングが一番大きいタイプの機器を利用していることが多いと思います。そして、利用時間も多い。この機器を優先的に何かできるか、他の解決方法から模索して見てください。
6.設定温度が自由(管理されていない)
上記5の通り、機器毎に設定が変わっても良いと思いますが、自由に設定を変えるのは考えものです。
設定温度が1℃変えると、消費電力は10%変わるのは事実です。
当社も機器毎のデータ測定を行うことがありますが、同じ室温・外気温で1℃設定を変えると10%以上の変化が見られました。
とある大企業の工場では、事務所に温度管理担当者がおり、集中管理して、温度設定しているところもありました。
ただ、意外に設定温度は、自由というところが多いのも事実
工場のエアコンの省エネ・節電事例では、この温度設定の徹底で改善していることが多く見受けられます。
(結論:解決方法)
機器毎に、冷房・暖房の設定温度目安を知り、定める。
クールビズでいう28℃も設定温度ではなくあくまで部屋の温度、室温の上限としての目安となっています。
暑さ寒さは、個人差があるため、できれば、快適性評価(PMV)データを取ると良いと思いますが、コミュニケーションを重視し、適正な温度設定を決めると良いと思います。
営業所や店舗などでは、内勤者と外勤者によって、変わってくることがあります。
常にエアコンの効いた状態で過ごす人と暑い屋外から戻ってきた人で意見が対立するということは良く耳にします。
ファンなどを活用するのも有効だと思います。
夏の寝室のでは、タイマー設定をする場合があると思いますが、停止すると暑くて目が覚め、熟睡できず朝疲れて目覚めるということがあります。狭い空間ですので、設置温度を高めにしておくと負荷の軽い状態で運転となると思います。
また、脳を休ませる睡眠は、23℃近くまで下げ、冬の布団を掛けて寝るくらいが良いという話もありますが、健康と電気料金のバランスを考える必要もありますが、熟睡したいときにはありかもしれませんね。
7.運転時間が自由(管理されていない)
これも、設定温度同様、各機器毎(使用環境)に変わってくると思います。
直射日光が当たらず、窓を開け通風を得られれば、5月~6月位なら冷房運転は不要かもしれませんが、直射日光が当たり窓が開けられない場合は、冷房運転が必要になってきます。南東向きであればお昼前から、南西向きなら午後からと変わってくる筈です。
ビルのような高断熱・高気密の建物内であれば、一律集中管理も可能かもしれませんが、工場などの場合は、作業内容も変わってきますので、全体を一律は難しいですね。
(結論:解決方法)
機器毎に基本運転時間や運転可能温度の目安を定める。
デマンド値(30分デマンド値)の関係もありますので、運転開始時刻やお昼休み時間の停止の必要性なども検討する必要があります。
特に夏は、温湿度計やWBGT計測器を置き、判断基準を設け運用することが健康第一で快適性を持ち、作業性も維持する上で大事ですね。
余談ですが、2024年の猛暑はもう大変でした。
40℃近くの温度という環境下で作業をせざるを得ない時がありましたが、健康面の心配があるとともに、明らかに作業性が悪化しました。電気料金は抑制できても労務管理上、また労務費面では疑問です。
8.運転期間が自由(管理されていない)
地域・立地条件などにより変わってきますが、冷房運転期間、暖房運転期間は凡そ決まってきます。
ただ、クールビズやウォームビズの期間とはまた当然変わってくると思います。
その年によっても変わってきますね。
お米の備蓄をする場合、通常期間は常温保管ですが、最低気温が15℃を超えてくると、15℃以下の温度設定をした定温保管する必要があります。お米の例えですが、人間も同様ですね。このような判断基準は大事だと思います。
(結論:解決方法)
機器毎に基本運転期間や運転可能温度の目安を定める。
運転時間同様、特に夏は、温湿度計やWBGT計測器を置き、判断基準を設け運用することが健康第一で快適性を持ち、作業性も維持する上で大事ですね。
また、冷暖房運転しない期間には、機器の定期メンテナンスなどもスケジューリングしておくと良いと思います。
特に、冷房運転前の試運転はしっかりと早めに実施することをおススメします。
本格的に暑くなると、空調関係は繁忙期となり、部品調達や対応が遅くなったり、作業賃も高くなる場合もあります。
機器入れ替えが必要となった場合は、機器の選択肢も限定される場合もあります。
9.ドライ運転で運用
ドライ運転をしたいときとは、どういうときでしょうか?
湿度が高いとき
部屋干しをしたいとき
など、湿度を下げたい場合に、ドライ運転にしようかな?と考えると思います。
エアコンの運転自体が、湿度(相対湿度)を下げるものであると考えて良いと思います。
冷房であれば、室内機で温かい空気を吸い込み~熱交換器で冷却~結露発生~冷えた空気をファンで吐き出しとなります。
発生した結露は、傾斜を利用し、室内機内からドレンホースを流れ、屋外で流れ出します。室外機周辺が濡れているのがその結露水です。
暖房であれば、室温が上がりますので、水分量が同じで温度が上がることで湿度は下がります。
では、ドライ運転です。
ドライ運転には、2通りの方法があります。
・「再熱除湿」一度冷やして水分(結露水)を取り出した上で、再度温める
・「弱冷房除湿」軽く冷やして水分を取り出し、吐き出す。少し温度は下がる
ドライ運転で2通りの選択があれば良いのですが、ない場合は、「再熱除湿」となる場合が多いと思います。
この場合は、冷房してから暖房というイメージですので、電気使用量が増します。
電気料金のイメージとしては、以下の通りです。
弱冷房除湿<冷房<再熱除湿
(結論:解決方法)
温度を維持したまま湿度を下げたい場合は、除湿専用機(除湿器・乾燥機)をおススメします。やはり餅は餅屋ではないですが、専用機です。
雨続きで、部屋干ししたいという場合は、扇風機などを使い送風を上手に利用することが有効です。
室内の湿気を屋外に出す場合にも送風利用が有効です。
10.長時間未使用
1日、2日という短期間でなく、所謂中間期という、冷房期間や暖房期間以外の期間、数カ月空くような場合があると思います。
浜松市の場合、暖房でエアコンを利用しないというご家庭も多く、その場合、冷房運転が終わる10月頃から翌年冷房運転を開始する6月頃まで運転しない場合があります。
エアコン近くに専用コンセントがあり、差し込まれていると思います。
通電されており、リモコンからの操作を待機している状態です。
待機電力というものが発生しています。
微々たるものかもしれませんが、それが数あるとどうでしょうか?
仮に、低圧契約をしており、低圧利用がエアコンだけだった場合、待機電力があることで基本料金が発生しますが、コンセントを抜くことで、待機電力がゼロとなり、基本料金がその期間ゼロになります。(契約内容をご確認下さい。)
(結論:解決方法)
もう言うまでもありません、長期間使わない機器のコンセントは抜いておく
ただし、試運転など運転を再開する場合は、コンセントを差し込み少し時間をおいてから始動してください。
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i-Mage.ブログ【Vol.0497】でした。